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国際化学オリンピックに挑戦しよう!国際化学オリンピックに挑戦しよう!

なぜ、どうしてからはじまる思いを大切にしよう!

先生やお父さん、お母さんに「なぜ、どうして」と、聞くことはありますか?
ぎもん、ふしぎに思ったことをそのままにしないことはとっても大切なことですから、どんどん質問してみましょう。
でも、人に聞くだけでなく、いろいろな方法で分からないことの正解をさがすこともできます。
これからは「自分で調べてみる」ということにもチャレンジしてはいかがでしょうか。
自分で調べるということそのものが、新しい発見に出会うことにもなります。
そして、なぜやどうしての本当の意味がわかったら、だれかにわかりやすくお話することも勉強になんです。

ところで、「化学」(かがく)って知っていますか?
地球、ここにくらす生き物たちや、わたしたちから身の回りにあるものの、なぜ、どうしてを知るにも欠かせない学問であり、私たちの暮らしに欠かせない技術なのです。
化学をもっと知って、化学にチャレンジする人がもっと増えればと願っています。

なにからできているの?

ここで、みなさんに質問です。

「カレーライスはなにでできていますか?」

主食となるお米やナン、具材となる肉、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、カレー粉などのスパイス(香辛料)、油、水・・・。肉には牛肉、とり、ぶた、羊、もしかすると肉の代わりに魚かもしれません。
では、食べられたカレーライスはどのようになっているのでしょうか。答えは体に吸収され、生きるための栄養体となったり、体の一部になります。でも、そのままでは体の中に入っていけないでお米や肉、野菜などは小さく溶かされもっと細かな「なにか」に変わっています。もう知っているみなさんもいるかもしれませんが、「分子」(ぶんし)、「原子」(げんし)、「元素」(げんそ)が「もっと細かななにか」を知る力強い助っ人となります。

考えてみよう!調べてみよう!

ちょっとびっくりするかもしれませんが、わたしたちのはじめとする生き物、食べ物、身の回りの品々は肉眼では見ることはできない粒(粒子)に細かく分解することができます。これが原子が集まった分子と呼ばれます。鉄、酸素、ケイ素や水素、炭素など有名な元素です。さらに原子の種類を分ける時に用いるのが元素です。ちなみに水は「水素原子1個と酸素原子2個からなる分子」、空気は窒素分子、酸素分子、水素分子や「酸素原子2個と炭素原子1」でできている二酸化炭素が混ざった気体が正体です。

実は地球には数十種類の元素が存在しているのですが、わたしたち生き物だけでなく、地球上のすべての「もの」が、限られた種類の元素を組み合わせながらできあがっています。そして、とても重要なのが、それぞれの元素の量も決まっている点です。例えば酸素。ある時はわたしたちの体、またあるときは動物や植物だけでなく、自動車やスマートフォンといった製品へと使い回されています。あるところで、元素がとどまってしまうと、ほかのところで足りなくなります。場合によっては地球全体ではバランスがくずれてしまい、思わぬ問題が生じてしまいます。そのひとつが、炭素が大気中で多くなってしまっている地球温暖化です。

このように小さな世界から地球で起こっているできごとまでの「なぜ」をすっきりさせる学問が化学なんです。今、地球がどうしているかを正しく見たり、直したり、さらにはみなさんの毎日の生活にも化学の力はなくてはならないものです。まだまだ、自然にはかないませんが、人類は化学を学び、その力を借りて、文明を発展させてきました。なかでも日本はノーベル化学賞で多くの受賞者が選ばれており、新しい素材や材料の開発などを通じてビジネスでも世界をリードしています。温暖化問題や地球環境問題の解決でも化学の力が期待されています。

国際化学オリンピックに挑戦しよう!

これからの社会を作り上げるのは日本、世界で活躍するみなさんです。化学の分野でも同じです。知ってほしいのが、毎年夏に行われる「国際化学オリンピック」(IchO)です。それぞれの国から選ばれた高校生が一堂に集まって、化学の知識に挑戦する「科学の祭典」です。今年は大阪で開かれる日本大会(7月25日~8月2日)だったのですが、新型コロナウイルスが世界的に流行したため、この期間でリモート開催することになりました。国際大会には例年、80カ国・地域から300人近くの世界の「化学大好き」高校生が超難問にチャレンジします。オリンピックなので成績によって金・銀・銅のメダルがもらえます。金メダルは参加者のわずか1割ほどしか選ばれませんが、世界に友達を広げるとてもいい機会となっています。

では、日本代表になるにはどうすればいいのでしょうか。まずは日本の化学大好きが難問を立ち向かう「化学グランプリ」への参加です。1次テスト(1次選考)は毎年7月(海の日)に全国の会場で行われます。この1次テストから80人程度が8月の2次テスト(2次選考)へと進みます。化学グランプリも化学の知識を競うことが同じで、成績によって表彰されます。そして翌年の国際化学オリンピックの日本代表も、ここで選ばれます。まず、秋に20人くらいの日本代表候補が選ばれ、さらにレベルが高い国際大会に向けたトレーニングが行われ、最終的に4人の代表選手が決まります。

国際大会に行けるのは高校生(高専などは高校と同じ学年)ですが、前年なので日本代表候補は中学3年から高校2年生が選ばれます。日本代表には1回だけしかなれませんが、化学グランプリには小学生でも参加できますので、日本代表を目指してチャレンジしてみて下さい。もちろん、化学にとどまらず物理学、生物学といった自然科学(サイエンス)、理系の勉強も大事ですが、英語はもとより、国語、歴史といった文系の知識もたくさん学んで下さい。

世界で活躍する化学者、化学技術者に

化学は元素を上手に使って、自然では少ない物質やこれまでにない新しい物質(素材・材料)を生み出す力を秘めています。その一方で化学を知るにも化学が必要となります。化学を仕事にするには大学や企業などでの研究や開発を行うことです。今まで知られていない発見に出会うこともあり、とてもやりがいがあると思います。

しかし、化学は研究開発に取り組む化学者(ケミスト)や化学技術者だけのものではありません。化学はわたしたちの生活でも身近な存在です。体のなかで起こっていることも化学そのものといえます。そのためにも化学に限らず正しい知識、幅広い知識がなにより大切で、これからも「なぜ、どうして」の気持ちを持ち続けてほしいです。